おいらの姉ちゃん
おいら、姉ちゃんが大嫌い。
おいらの姉ちゃんは足が不自由で小さな頃から高校卒業までを施設で過ごした。両親も姉ちゃんもさぞ辛かっただろうな。でも、おいらも辛かった。常に「優しい弟」を演じなければいけなかった。自分でも無意識のうちに。
そういえば、姉ちゃんと一緒に遊んだ記憶もないや。一緒に走り回ったり喧嘩したり、したかったな。父ちゃんも母ちゃんも仕事忙しくて、おいらいつも一人でおもちゃで遊んでた。
姉ちゃんが高校卒業して家に帰って来たら、それまで一人っ子みたいに育って来たのになんとなく父ちゃんと母ちゃん取られた気がして。この頃から母ちゃんはおいらに「もし、母ちゃんたちが居なくなったら、姉ちゃんのこと頼むよ」って変なプレッシャーかけられたりして。
おいらが就職した頃には、社会経験の差から姉と弟の立場がどんどん逆転していって。。。全然、成長しない姉ちゃんがもどかしくてさ。
何かと相談できる姉ちゃんが欲しかったな。
でも仕方ないよな。姉ちゃん、小さい頃から施設に入って「与えられる」だけの生活しかしてこなかったんだから。これは姉ちゃんが悪いんじゃない。、選択や思考の機会を与えなかった、当時のこの国の障害者への対応が間違っていたんだから。
もし、弟として姉を選べる権利があるなら、
綺麗で明るくて、面倒見がよくて、強くて優しい
そんな姉ちゃんが欲しかったな。
姉ちゃん、悪いけどおいら。あんたの下の世話をするつもりはさらさらないから。
でも安心しな。幸いおいら、仕事柄、姉ちゃんが一人でも生きていける手段はいくらでも知ってるんだ。
皮肉にも姉ちゃんのおかげで知り合った、知人に紹介された会社で働いて24年。まさか、こんなに打ち込める天職になるとは思わなかった。
明日は姉ちゃんの誕生日。
一日早いけど、今日、お祝いに行って来た。
昔の懐かしい話、今通ってる作業所のこと。そしてチラッとだけど将来のこと。何故かいつもよりいっぱい話してくれたね。
姉ちゃん、誕生日おめでとう。
ごめんよ、こんな弟で。
そして、ありがとう。
姉の誕生祝いにケーキを買いました。
今日一日、こんなことを考えながら過ごしてました。そしてその先に別なモノの答えがありました。
おいらが風俗に求めていたもの。
それは、
綺麗で明るくて、面倒見がよくて、強くて優しい
理想の姉でした。。。